網代陶石採掘 坑道
「謎の陶石『網代陶石』」は、長崎県佐世保市の針尾島網代地区に産することから網代陶石と呼ばれていますが、江戸初期に発見されて以降、多くの三川内焼に使用されたものの、現代ではほとんど使われていない「伝説の陶石」です。
私は多くの文献調査などから、その存在を確認し掘り出したこの「網代陶石」を使って研究を続け、「卵殻手」の復活に成功することができました。こうした研究を行った私しか語ることのできない秘話を少しだけお話してみましょう。
過去に網代陶石を研究した専門家の報告書を見ると「準陶石の様である」と書かれているものもあります。しかし、実際には粘性も高く、乾燥収縮が小さいことから、江戸時代には三川内焼特有の「ひねり物」や「置上」の製作に活躍しています。
近代になって多くの磁器が石膏の型による成形によって作られていますが、江戸時代には手ロクロ成形が中心で、これによって網代陶石の性能が引き出されたのではないかと思います。
私は卵殻手も手ロクロ成形によって製作していますが、極薄の磁器成形に必要な粘性も出ていますし、乾燥収縮も小さいという特性も引き出されています。
こうした薄手磁器を手ロクロ成形しながら、「三川内焼」の先達の技術の確かさと、研究熱心さとをつくづくと感じています。