ついたち参り

朝早く、神社までの山道を登るのは、清々しい。
寒い季節はちょっと億劫になりながちだけれど、歩きはじめれば冷たい頬とは
反対に、体はぽかぽか温かくなります。

今日は月初めの朔(ついたち)。お父さんは毎月お参りしています。
私は学校が休みなので、久しぶりに朔参りについていきました。
道沿いの山茶花が、硬い緑の茂みの中に淡い花色をのぞかせていました。

 

小高い山の麓に、神社の鳥居があります。
この鳥居も、石段も、三川内皿山の奥の本谷(ほんだん)で切り出された石でできているのだと、お父さんからきいたことがあります。
柔らかい質感の石は、角が取れて丸みを帯び、すっかり苔むしています。

登っていくと、不思議な「ポコン・ポコン」と高い音が反響してきます。
自分の足音は分かりにくいけど、前を行く人の足音は「ポコン・ポコン」と弾んで聞こえます。
「きっとこの石段の下は空洞があって、昔の窯跡や遺跡が眠っているのだわ」なんて、私は想像しています。

 

祀ってあるのは、天照大神。立派な太い文字で石に刻み込まれています。
お参りをして石段を降り、鳥居をくぐってから後ろを振り向きました。

山の斜面を駆け上がる石段の直線は、崖に当たって上のほうでは九十九折に曲がりくねっています。
「この石段は『銀河鉄道999』に出てくる、宇宙へのびる線路のモデルになったとバイ(三川内弁)」
その昔、宇宙を夢見る少年だったお父さんは、つぶやくように言いました。

「三川内やきもの語り」は
三川内皿山生まれの少女 釉子が語る
やきもの小説です

 


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